進化経済学会「企業・産業の進化研究部会」開催案内

進化経済学会会員各位

いつも大変お世話になっております。東京大学MMRC特任助教の黄でございます。
さて、来たる7月10日(水)に開催されます進化経済学会・部会の「企業・産業の進化研究部会」につきまして、下記の通り案内申し上げます。
当日飛び入りでのご参加も大歓迎でございます(参加費無料)。
何卒宜しくお願い申し上げます。
                                      ―記―
■日時:7月10日(水)   18:30~20:00
■場所:東京大学ものづくり経営研究センター(MMRC)
     東京大学経済学研究科 学術交流棟(小島ホール)5階(中会議室)
■研究発表
<発表者>
専修大学名誉教授  宮本光晴 様
<発表タイトル>
「日本企業におけるESG行動:コーポレートガバナンスの観点から」
<発表要旨>
 近年、コーポレートガバナンスの新たな展開として、ESGやESG投資に対する関心が高まっている。その前にはCSRやSRI(社会的責任投資)に関心が向けられたのであるが、今回は機関投資家が主役となることにより、E(環境)・S(社会)・G(ガバナンス)の基準に合致する企業は投資ポートフォリオに組み込み、合致しない企業は除外するという行動が、大きな影響力を発揮している。もちろんすべてではないとしても、このような機関投資家の行動は、シェアホルダー重視からステークホルダー重視の方向に、コーポレートガバナンスの転換あるいは拡張を促すものとみなすことができる。
 では日本企業においてESG/ESG投資はどのように展開されているのか。日本企業はステークホルダー重視のコーポレートガバナンスの典型とみなされてきた。するとCSRあるいはESGも活発に展開されていると予想できる。しかしそうではなく、ESGもESG投資も緒についたばかりで、欧米企業に対する遅れが指摘できる。その理由の1つとして、日本企業のステークホルダー重視は、経営者優位のコーポレートガバナンスを基盤とした内部のステークホルダー重視であるため、ESGが意味する環境(E)と社会(S)に関わる企業外部のステークホルダーに対する関心は後回しにされるということがある。さらに、ESGにおいてはG(ガバナンス)の課題が明示され、企業統治の透明性を高め、社外取締役の増大や経営のダイバーシティの進展が要求されるという意味で、日本企業のコーポレートガバナンス自体が改革の課題となるということがある。
 以上の観点から、まずESG/ESG投資に関して、日本と欧米との比較を行う。次に、Bloombergのデータを用いて、日本企業のESG行動がどのようなガバナンス構造に基づくのかを検証する。さらに、ESG行動が実際に環境(E), 社会(S) の課題に対する関与を高めるのか、環境の課題としてCO2排出量などに関して削減の効果をもたらすのか、社会の課題として女性従業員や女性管理職の活用を高めるように作用するのかを検証する。最後にESG行動と企業パフォーマンスとの関係を検証する。以上の分析を通じて、2000年以降の日本企業のガバナンス改革がESG行動を促進することが発見できると同時に、これをどのように解釈するのかを論じることにする。
ご多用のところ恐れ入りますが、皆様のお越しを心よりお待ちしております。

黄 巍