吉田 雅明会長

 2024年4月より、磯谷明徳前会長より学会長の職を引き継ぎ、2027年3月までその職務を務めることになりました吉田雅明と申します。新執行部(橋本敬副会長、徳丸宜穂学会事務局長、西洋会計担当理事)と新理事の方々とともに学会運営にあたってまいります。微力ではありますが精一杯務めますので、ぜひともみなさまのお力添えを賜りますよう、どうかよろしくお願い申し上げます。

 さて、日本社会では2023年5月で新型コロナ感染症が終息したものとされ、本学会も大会をはじめとする各種イベントを再び対面で行うようになりました。ハイブリッド開催の2023年東京大会(立教大)を経て、2024年福井大会では対面開催(海外セッションのみハイブリッド)が行われ、久々に様々な研究領域の研究者が一堂に会しての議論や、会場のあちこちでの情報交換が再開できるようになったことを喜びたいと思います。それまでは実現が難しかった学会コミケでの古本市も始まり、徐々にかつてのリアルな賑わいを取り戻しつつあります。とはいえ、モデルナのサイト下水サーベイランスを見ましてもコロナの波は続いておりますし、半年遅れの厚生労働省の人口動態調査を見ましても年間4万人ほどの人々がコロナで命を落とされていますので、従前通りとはいかず、できるだけ用心しながらというのは当分続きそうです。

 しかし私たちはコロナ対応の中でいくつかのノウハウを手に入れました。その一つが、ただのZoom会議にとどまらないオンラインイベントのノウハウです。二回目となりました12月のLPFはGather.townを用いた完全オンラインの一日イベントですが、ミニレクチャーあり、懇親会あり(ここ重要!)で、旅費などの負担がないのは、学生・院生の方々にも学会参加の門戸を大きく広げることになりますし、会場設営も容易ですので、これからも活用していきたいと考えています。そのほかにもハイブリッドで研究会を開催するときにクリアな音声で会場とオンライン参加者をつなぐ技術など、学会の中で共有し、安全で活発な活動を展開していきましょう。

 とはいえ技術はあくまでも技術でして、どのような環境下であれそれを私たちが活かしていけるのかは組織の問題であります。磯谷前会長のもと委員会体制を整備し、組織の問題には組織を改善し、コミュニケーションのロジを回復させることであたっていこうということになりましたが、まだ道半ばであります。委員会を作っても委員長の一人仕事になってはいけませんし、会計やNLのようにお一人で担当してくださっているところもありますので、各所で仕事を抱え込んで孤立することのないよう、オンラインで気軽につながる仕組みの実現に努めてまいります。また、設立から30年近くにもなりますと、研究部会のメンバーの入れ替わりや消長もあり、当初はさほど問題がなかった学会全体との連携も滞りがちになってきたのではと思いますし、各ジャンルでの研究の深まりは素晴らしいことなのですが、設⽴当初の強みであった、異分野融合で1つのテーマで盛り上がることが難しくなっているのではないかと危惧する次第です。そこで初⼼に返り、専⾨的理解とまではいかなくてもせめてそのジャンルでなにが⾯⽩いのか、共感できるような⼟壌を意識的に再⽣していこう、ということで始まったのが、分野概略オンラインレクチャーシリーズでした。昨年の第⼀弾「J. R. コモンズ「制度経済学」の可能性:領域横断的進化経済学の始原を探る」では、部会運営にあたってこられた中原隆幸会員に、ジャンル外の⽅にも「森がみえる」ようにお話しいただきました。このような企画は今後も続けていこうと思いますので、ぜひみなさまのご協力をお願いいたします。

 進化経済学会は複雑系ブームの熱気の中、従来の経済学に飽き足らない様々な学問的背景の人々の手によって立ち上がりました。経済学のフレームワークそのものについて論じること、しかもその新たな構築の場面に自分も関われるかもという高揚はいまでも覚えております。これからも学問を大きな文脈で正面から高い水準で論じ合うことのできる貴重な場として、そしてなにより楽しい場となるよう、進化経済学会を共に築いてまいりましょう。

2025年2月2日

進化経済学会長

吉田 雅明