2028年度科研費公募のための「審査区分表」の見直しが、日本学術振興会より提起され、審査小区分の内容の例から、進化経済学も削除されようとしています。それに対するパブリックコメントが9月7日締切で募集されています。
まず、変更内容は文科省の次のページで公表されています。
https://www.mext.go.jp/a_menu/shinkou/hojyo/1385136_00007.htm
ポイントは、ここにある「別添_審査区分表改正案(新旧対照表)」で、(1)9〜10ページ。
審査小区分にあった、07020「経済学説および経済思想関連」を削除し、 審査小区分07010を「理論経済学および経済思想関連」と改名して統合(2)9ページ。
統合された新たな審査小区分「理論経済学および経済思想関連」の「内容の例」からもとの(学説・思想)区分にはあった「進化経済学」「経済制度」「経済体制」を廃止し、「社会経済学」「経済学説」「経済思想」「経済哲学」を追記というところで、懸念されることは
直接的には
・科研申請に記入するキーワードに「進化経済学」がなくなること(他に申請の際に関係しそうな、非標準的なキーワードも)
ですが、関連して
・審査小区分の統廃合によって、用意される審査委員の構成や選考方法が、いままでよりもいっそう標準的な経済学に寄ったものとなり、結果として選考の幅・多様性が制度的に減殺される可能性が大きいことは、日本における学問としての経済学研究の土壌を損なうものとして問題があります。
リンク先にある「科研費審査区分表及び審査方式の見直しに当たっての基本的考え方」では、言葉としては「多様性」が強調されていますが、採択率の高い審査区分に応募が集まる傾向がある以上、応募件数が少ないことをもって審査区分の統廃合を進めるならば、そのフィードバックループの結果は自明だからです。
この「見直し」に対する9月7日(日曜)を締切とするパブリックコメントが次のリンクで求められています。
https://forms.office.com/Pages/ResponsePage.aspx?id=sBBYVMs2kEKJJkjbwPnpLzpE50zi9oBHpZYcexToj85UMEU4QzNJWjJUOU1RTDVORVhVNlNURUFERS4u
なお、上記フォームでは、
1ページ目で、氏名・所属機関の種類・所属機関名・職種・職名・研究分野・メールアドレス、が必須項目として、年齢、電話番号、が任意項目として、入力が求められ、必須項目を入力すると、2ページ目で、「大区分」、「中区分」、「小区分」、「内容の例」のそれぞれについて、区分番号を入れた上で、意見を書き込むようになって、「送信」するつくりになっています。
10年ほど前にふりかかった参照基準問題を思い出させるような話ですが、会員の皆様におかれましては、これ以上わが国の学術が多様性を失い、先細りしてしまわないよう意見表明という形でご協力くださいますようお願いいたします。
進化経済学会事務局(会長) 吉田雅明 拝